【GTM担当者向け】GTM戦略は「営業で検証」してから広げる。PoCとGTM実行を分ける理由と、営業パートナーに求める3つの役割

「GTM戦略はできている。あとは営業に落とすだけ」「営業代行に頼んだら、架電数の報告しか返ってこない」「PoCで反応は出たのに、そのあと誰が広げるのかが決まっていない」

新規事業や新サービスのGTM(Go-to-Market)を担当する経営企画、新規事業責任者、BizDev、そして外部のコンサルタントの方から、この3つをよく聞きます。

先に結論をお伝えします。GTM戦略の実行を外部の営業に任せるときに求めるべきなのは、架電の量ではありません。戦略側の仮説を歪めずに架電に落とし、市場の反応を歪めずに返すことです。そして、その役割はPoC(検証)とGTM実行(再現・拡大)で中身が変わります。ここを分けずに一括で発注すると、検証の期間に量を追わされ、拡大の期間に仮説を作り直すことになります。

本記事は、GTM戦略を設計する側の方に向けて、営業実行を外部に任せるときの分け方、営業パートナーに求める役割、戦略側が渡すものと実行側が返すものを整理したものです。営業代行の側から見た実例も数字とセットで載せます。

この記事の要点

  • GTMの営業実行は2段階に分かれる:PoC(1〜2か月、仮説の検証)とGTM実行(PoC後、数か月〜、売れる条件の再現と拡大)。契約も報告も分けたほうが、戦略側の判断が速くなります。
  • 営業パートナーの役割は3つ:仮説を架電に正確に落とす、反応と断り理由を歪めずに返す、売り方の変更を判断材料として持ち帰る。架電数の消化は役割に入りません。
  • KPIは検証のあとで決める:提案の段階で目標件数を約束させると、検証の期間に量を追う設計になります。PoCの結果から目標と条件を決めるのが順番です。
  • 実行側に渡すのはICP・訴求・除外条件の3点:ここが曖昧なまま架電が始まると、返ってくる反応も曖昧になります。
目次

GTM(Go-to-Market)とは?営業実行から見た定義

GTM(Go-to-Market)とは、新しい商品やサービスを、どの市場に、どの顧客に、どの価格と経路で投入するかを決める計画のことです。ICP(Ideal Customer Profile:理想の顧客像)、ターゲットセグメント、価値提案、価格、販売チャネル、パートナー戦略、営業プロセスといった要素で構成されます。

GTM戦略を設計するのは、社内であれば経営企画や新規事業部門、BizDev、社外であれば戦略コンサルタントやフリーランスのGTMプロフェッショナルです。人材募集の現場でも、GTM戦略の設計と営業体制の構築を1〜3か月で担う役割が、月額100万円以上の単価で募集されています。

一方で、GTM戦略は机上で完成しません。どの企業が顧客になるのか、どの部署の誰が反応するのか、何を価値として伝えると話が進むのかは、実際に営業して市場の反応を取るまで確定しないからです。ここが、GTMの設計者と営業の実行者が分かれる理由であり、営業実行を外部に任せる場面が生まれる理由でもあります。

POINT:GTM戦略の営業実行を外部に任せるとき、相手に求めるのは「戦略を代わりに考えること」ではありません。「戦略側の仮説を市場で検証し、その結果を戦略側の判断に使える形で返すこと」です。

なぜ、GTMの営業実行は一般的な営業代行と噛み合わないのか

営業代行に頼んだのに戦略の検証にならなかった、という話には共通の原因があります。

1. 報告が架電数とアポ数で終わる

一般的な営業代行の報告は、コール数、着電数、アポ数が中心です。GTMの検証で必要なのは、どのセグメントの、どの役職が、どの訴求で反応したか、断った理由は何か、という一次情報です。件数だけの報告では、仮説を修正する材料になりません。

2. 提案の段階でKPIを約束させてしまう

提案時に「月○件のアポ」を約束させると、営業代行の側は達成しやすいリストとトークに寄せます。反応が薄いセグメントは早々に外され、戦略側が本当に確かめたかった仮説は検証されないまま終わります。営業代行の失敗の多くは、提案時にKPIを出して受注し、キックオフでターゲットが変わることから始まります。

3. 検証と拡大が同じ契約に入っている

PoCの1〜2か月と、その後の再現・拡大では、必要な稼働量も報告の粒度も違います。同じ契約に入れると、検証の期間に量を求められるか、拡大の期間に仮説の作り直しが起きます。契約を分けたほうが、戦略側は検証の結果を見てから次の投資を判断できます。

PoCとGTM実行を分ける

営業実行を2段階に分けると、戦略側の判断が楽になります。

段階目的期間稼働の中身報告の主軸契約
PoC(検証)仮説のどこが当たり、どこが外れているかを確かめる1〜2か月セグメントごとに少量ずつ架電し、反応を比較する反応したセグメント・役職・訴求、断り理由の分類月額固定。KPIは置かない
GTM実行(再現・拡大)見つかった売れる条件を再現し、リストと稼働を広げる数か月〜反応の良かった条件のリストを増やし、新規開拓・商談代行・リードのフォローを組み合わせる有効商談の件数と内容、受注までの進捗月額固定。目標と条件はPoCの結果から決める

PoCで確かめるのは、次の3点です。

  1. ICPの当たり外れ:どの業種・規模・状態の企業に反応があったか
  2. 部署と役職:誰に届いたときに話が進んだか、誰で止まったか
  3. 訴求の当たり外れ:どの言い方で担当者が課題を認識したか、どの言い方で「間に合っている」と言われたか

この3点が見えると、GTM実行の段階で何を広げるかが決まります。逆に、PoCを飛ばしてGTM実行から始めると、広げるべき条件が分からないまま稼働だけが増えます。

営業パートナーに求める3つの役割

GTM戦略の実行部隊として外部を使うなら、次の3つができる相手を選びます。

役割1:仮説を架電に正確に落とす

戦略側が定義したICP・訴求・除外条件を、リストとトークに変換する力です。ここで大切なのは、リストを業種やエリアといった属性だけで切らないことです。予算時期、新規出店や事業転換の公表、他社サービスの導入状況、過去の取扱経験といった、いまその商材を必要としている状態で切ると、同じ訴求でも反応が変わります。

中堅・大手企業を狙う場合は、代表番号ではなく担当部署の直通番号で届ける手段が要ります。受付で止まっている架電は、仮説の検証になっていません。

役割2:反応と断り理由を歪めずに返す

架電の結果を件数に丸めず、一次情報のまま返す力です。最初に電話に出た人の役職、担当者に届いたかどうか、どの訴求で話が進んだか、断り理由の分類、競合や既存の取り組みについて聞けたこと。これらが週次で戻ってくると、戦略側は仮説を修正できます。

全コールの録音が共有されるかどうかも確認してください。報告書の要約ではなく、相手の言葉そのものを聞けることが、検証の精度を決めます。

役割3:売り方の変更を判断材料として持ち帰る

検証を続けると、ターゲットや訴求の修正では足りず、何として売るかを変えたほうがよい、という場面が出ます。SaaSとして売るのをやめて集客の仕組みとして訴求する、入口商材を変える、価格の見せ方を変える、といった判断です。営業パートナーの役割は、この判断を代わりに下すことではなく、判断に必要な材料を持ち帰ることです。判断は戦略側が行います。

POINT:この3つに「架電数の消化」は入っていません。架電数を成果にする営業代行は、GTMの検証には向きません。

戦略側が渡すもの、実行側が返すもの

営業実行を外部に任せるときに、最初に揃えておくと検証が速く進むものを整理します。

戦略側が渡すもの

  • ICP:業種、規模、地域に加えて、いまその商材を必要としている状態の仮説
  • 訴求の仮説:2〜3パターン。どれが当たるか分からない前提で複数用意する
  • 除外条件:既存顧客、競合の取引先、NDA上の制約、避けたい業態
  • 商談の引き渡し条件:有効商談の定義(資料送付の約束は含めない、担当者が課題を認識したうえで説明の場を設けたものだけを数える、など)
  • 持っている実績と経歴:電話の最初の30秒に入れられる材料

実行側が返すもの

  • 日次:架電結果(誰に届いたか、反応、次のアクション)
  • 週次:セグメント・役職・訴求ごとの反応、断り理由の分類、有効商談の内容、次に試す切り口
  • 都度:売り方や入口商材、価格の見せ方に関わる相手の発言
  • 全コールの録音

この受け渡しがあると、PoCの1〜2か月で、GTM実行の段階で何を広げるかが決まります。

実例:営業代行の側から見たGTMの検証

スリーグッドが営業実行の側で担当した案件から、GTMの検証に当たる例を5つ挙げます。GTMの目的は売上を数倍にすることなので、アポ率ではなく、受注と売上がどう変わったかで書きます。

事例1:古着の撮影代行サービスの新規事業(株式会社コンコルド)

  • ターゲット:撮影代行を必要とする出品者
  • 課題:新規事業として立ち上げた撮影代行の売上がゼロ。以前の営業代行はGoogleマップから作ったリストで成果が出なかった
  • 戦略:撮影代行を必要とするのは、梱包して送れる商材を自分で出品している業者だという仮説を立て、Yahoo!オークションの出品業者を1社ずつ調べてリストを作り直した
  • 成果:9か月で商談37件、受注5件(受注率13.5%)、受注金額1,877万円。支援費用は約300万円で、受注金額は費用の約6倍。売上ゼロの新規事業に、最初の売上と再現できる売り方ができた。詳細はnoteで公開

事例2:店舗工事・内装設計の新規開拓(株式会社日成クリエイト)

  • ターゲット:新規出店や事業転換を公表している企業、医療関係の設計事務所
  • 課題:紹介中心の受注が半導体不足などで細り、自社のテレアポと飛び込みでは3年間で新規取引先2社、飛び込みの成約はゼロ
  • 戦略:内装の需要が出るのは新規事業や事業転換のタイミングだと考え、公表資料をもとに状態でリストを作成。月10件の有効商談を目標に100〜200件のリストで架電
  • 成果:受注3件。うち1件の医療設計事務所は継続取引になり、新規取引先の獲得ペースが3年で2社から支援期間中に3社に変わった。詳細は対談で公開

事例3:ゲーム型キャリア研修(株式会社BeOne)

  • ターゲット:自治体と民間企業の人事部門
  • 課題:創業2期目、代表2名で営業経験がなく、ターゲット・トーク・リストのどれもない状態
  • 戦略:11月は翌年度の予算要求に間に合う自治体中心、1月は自治体の予算が閉じるため民間中心に切り替え。週1回の定例で反応と断り理由をそのまま共有し、次のターゲットとトークを決めた
  • 成果:3か月・1,294コールで有効商談59件(アポ率4.6%)。当初目標の4か月26件に対し2倍以上。県庁1件は翌年度の受注が決定し、契約終了後も中核市から研修検討の声が続いている。詳細は対談で公開

事例4:大手SIerの新規事業(経営企画部門からの依頼)

  • ターゲット:自治体、その後に製造業・化学業界の中堅・大手
  • 課題:新規事業として複数の商材を持ち、それぞれの売れる相手が未確定
  • 戦略:商材ごとにPoCで反応を取り、ターゲットを検証結果で変更。CXOレター送付先へのフォローコールなど、商材に合わせた経路も検討
  • 成果:1商材の検証結果をもとに、別商材の新規開拓を順に依頼される形に

事例5:ローンチ前の飲食店向けファストパスサービス(株式会社ハヤパス)

  • ターゲット:飲食店(当初は行列店・多店舗チェーン・競合サービスの利用店)
  • 課題:サービスの認知がゼロで、どの店舗に響くかが分かっていない
  • 戦略:架電を市場調査として使い、最初に出る人の役職、理解の速さ、課題の言語化を記録。店舗運営にすでに投資している痕跡のある店に絞り直し、担当部署を指名して呼び出す形に変更
  • 成果:半年で約20店舗の導入。詳細はコラムで公開

5つに共通するのは、最初の仮説が外れていたこと、そして外れ方を反応と断り理由から特定して次の仮説に変えたことです。コンコルドと日成クリエイトは、営業実行の側がリストの定義を変えたことで、売上ゼロや新規ゼロの状態から受注が動いた例です。GTMの営業実行で価値が出るのは、この修正の速さと、修正の結果が売上に届くまで走り切ることです。

GTMの営業パートナーを選ぶ3つの判断基準

1. 提案の段階でKPIを出さないか

提案時に目標件数を約束する相手は、検証ではなく達成に寄せた設計をします。PoCの結果から目標と条件を決める、という順番を取れる相手を選びます。

2. 断り理由が報告に入っているか

過去の報告書を見せてもらい、断り理由の分類と相手の言葉が入っているかを確認します。件数だけの報告は、GTMの検証には使えません。

3. 料金が月額固定か

成果報酬型は、アポの件数が報酬になるため、検証すべきセグメントより取りやすいセグメントに架電が寄ります。GTMの検証段階では、月額固定で稼働の中身を戦略側が指示できる形が向いています。成果報酬への移行は、PoCで売れる条件が見えてから判断すれば十分です。

よくある質問

Q1. GTM戦略の設計そのものも任せられますか

スリーグッドはGTM戦略を設計する会社ではなく、設計された戦略を営業で実行し、市場の反応を持ち帰る会社です。設計は社内の経営企画・新規事業部門や外部のコンサルタントが担い、その実行部隊としてお使いいただく形が合っています。

Q2. PoCの期間はどのくらい必要ですか

1〜2か月です。セグメントごとに少量ずつ架電して反応を比較するため、1か月では切り口が足りず、3か月を超えると検証ではなく稼働になります。

Q3. PoCで出た数字をそのままGTM実行の目標にできますか

そのまま目標にはしません。PoCは複数の切り口を少量ずつ試す期間なので、反応の良かった条件だけに絞った稼働では数字が変わります。PoCの結果から、絞った条件での目標と稼働量を決め直します。

Q4. リストや直通番号はこちらで用意する必要がありますか

不要です。ICPと除外条件をいただければ、状態で切ったリストの作成と、中堅・大手企業の担当部署の直通番号の調査はこちらで行います。20万社150万部署の直通番号データベースを持っています。

Q5. 商談以降もお願いできますか

有効商談の設定までを基本とし、オンライン商談の代行と全国での訪問商談も別途お受けしています。GTM実行の段階では、新規開拓と商談代行、展示会やレターのリードへのフォローコールを組み合わせます。

まとめ

GTM戦略の営業実行を外部に任せるときの整理は、次の3点です。

  • PoC(1〜2か月の検証)とGTM実行(PoC後の再現・拡大)を分け、契約も報告も分ける
  • 営業パートナーに求めるのは、仮説を架電に正確に落とす、反応と断り理由を歪めずに返す、売り方の変更を判断材料として持ち帰る、の3つ。架電数の消化は役割に入れない
  • KPIはPoCの結果から決める。提案時にKPIを約束させない

GTMの設計者と営業の実行者が分かれている体制で、実行側に必要なのは、仮説を正確に架電に落とし、反応を歪めずに返すことです。スリーグッドは、200社以上の新規開拓でこの役割を担ってきました。GTM戦略の営業実行についての進め方は事業内容のページにもまとめています。まずは、いまの仮説を聞かせてください。

株式会社スリーグッド 代表取締役 田中祐貴
X:@threee_sales HP:threegood.net

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