「首都圏に取引先を広げたいが、営業の拠点がない」「出張のたびに数件しか回れず、続かない」「展示会で名刺は集まるが、その先につながらない」。地方に本社を置く企業から、一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)の新規開拓について、こうしたご相談をよくいただきます。
首都圏は企業も店舗も多く、市場は大きい一方で、知らない会社からの提案が毎日のように届く地域でもあります。拠点のない地方の企業が、相手を絞らずに電話や訪問を重ねても、件数と移動の時間だけが増えていきます。
先に結論をお伝えすると、地方の企業が首都圏を開拓するときは、電話で話を聞いてくれる相手を絞り込み、訪問はまとめて決める進め方が近道です。この記事では、京都に本社を置き、地方から首都圏に向けた新規開拓を担当してきた立場から、その具体的な進め方を解説します。

この記事の要点
- 首都圏は相手が多い分、絞り方で差がつく:エリア、業態、企業の状態で相手を絞ってから電話します
- 苦戦の原因は営業の手と移動:拠点がないこと、知られていないこと、展示会頼みになりやすいことが重なります
- 電話で絞り、訪問はまとめる:関心のある相手を電話で見つけ、訪問は1日に複数件まとめて組みます
- 商材によっては卸を使う:サンプルと取引先の卸を組み合わせると、ロットの合わない商材でも入り口をつくれます
一都三県(首都圏)の市場の特徴
首都圏には、本社機能を持つ企業や、チェーンの本部、飲食店、ホテルなどが集まっています。売り先の数が多いことは、地方の企業にとって大きな魅力です。
ただし、相手の数が多いということは、競合の数も多いということです。首都圏の担当者のもとには、知らない会社からの電話やメールが日常的に届いています。会社名や商品名を伝えただけでは、話を聞く理由になりません。
また、一都三県とひとまとめにしても、相手の密度は地域で大きく違います。東京の都心部と、神奈川・埼玉・千葉の郊外では、同じ業態でも店舗や事業所の数が異なります。首都圏全体に同じように電話をかけるのではなく、どこから攻めるかを先に決めることが大切です。
地方の企業が首都圏で苦戦する4つの理由
1. 知られていない
地元では名の通った会社でも、首都圏では初めて聞く名前です。商品の良さを説明する前に、どこの誰からの電話なのかで判断されてしまいます。会社の紹介から入るのではなく、相手が今困っていそうなことから話を始めると、地方の会社であることは大きな壁になりません。
2. 首都圏に営業の拠点がない
拠点がないと、営業は出張が中心になります。1回の出張で回れる件数は限られ、電話でアポイントを取っても、訪問の日程が合わずに流れてしまうことがあります。出張のたびに一から電話をかけ直していては、営業担当の時間が移動と調整で埋まってしまいます。
3. 展示会に頼りやすい
首都圏の展示会は来場者が多く、一度に名刺を集められます。ただし、来場者が狙っている相手と合っているとは限りません。当社が担当した大阪の飲料メーカーの案件では、展示会の来場者は個人店のオーナーが中心で、取引したい規模の相手とは違っていました。展示会は名刺を集める場としては優れていますが、集めた名刺の中から本当に話すべき相手を見つける作業は、別に必要になります。
4. 取引先がすでに固まっている
首都圏の大手や中堅の企業は、仕入れ先や外注先が決まっていることが多く、地方の新しい会社が入り込む余地は大きくありません。直接の取引より、すでに付き合いのある卸や問屋を通したいという相手もいます。正面から取引先の入れ替えを迫るより、今の仕入れ先で困っていることや、足りていないものを聞くところから始める方が、話が進みやすくなります。
首都圏の営業体制をどうつくるか
地方の企業が首都圏の開拓に取り組むとき、営業の体制は大きく3つの形があります。
| 形 | よいところ | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 首都圏に営業担当を採用する | 顔を合わせる機会を増やせ、長く続けるほど関係が深まる | 採用と育成に時間がかかる。最初の売り先が見えないうちは、担当者が何から始めればよいか迷いやすい |
| 本社から出張して回る | 社内の営業担当が直接話せ、商品の説明が深くできる | 1回の出張で回れる件数が限られる。電話での日程調整まで担当者が抱えると続かない |
| 電話は外部に任せ、訪問をまとめる | 売れる相手を早く見つけられ、訪問を会うべき相手に絞れる | 最初の2か月は、エリアと相手を試して比べる期間になる |
いきなり首都圏に人を置く前に、電話でどのエリアのどんな相手に反応があるかを確かめておくと、そのあと採用や出店を決めるときの判断材料になります。
一都三県をどう切るか
エリアの順番を決める
首都圏全体に一度に電話するのではなく、反応を見ながらエリアを広げていきます。ある人材系の案件では、東京、神奈川、埼玉、千葉の順で優先順位を付けて電話しました。商材によって、最初に攻めるべきエリアは変わります。
郊外では対象の業態が少ないこともある
飲食店を対象にした案件では、埼玉のエリアでアポイントがほとんど出なかった月がありました。振り返ると、もともと対象になる業態の店舗が少なく、対象外の業態が多い地域でした。郊外を攻めるときは、電話をかける前に、狙う業態がどれくらいあるかを確かめておきます。
訪問を前提にするなら、移動しやすい範囲で絞る
訪問で商談をまとめる場合は、区や市の単位で相手を絞ると、1日に複数件を回りやすくなります。訪問しにくい地域は、オンライン商談の相手として分けて考えます。
企業の状態と部署で絞る
首都圏は相手が多いので、新しい拠点を出した、採用を増やしている、新しい事業を始めたといった企業の状態でリストを切ると、話を聞いてもらえる相手に早くたどり着けます。大手や中堅の企業には、担当部署の直通番号に電話し、受付で止まらないようにします。
電話で絞り、訪問でまとめて決める
拠点のない地方の企業が、首都圏で無理なく商談を重ねるための進め方です。
| 段階 | 進めること |
|---|---|
| 電話で絞る | リストに電話し、課題や関心のある相手を見つけます。資料やサンプルを送る相手と、すぐに会いたい相手を分けます |
| 訪問日をまとめる | 訪問のアポイントは、同じ日の近いエリアにまとめます。アポイントが2件以上そろった日だけを訪問日にし、1件だけの日はつくりません |
| 訪問する | 関東に住む担当者が、1日3件程度を目安に訪問します。自宅からの移動時間を見て、無理のない時間でアポイントを組みます |
| 商談のあと | 商談の内容を共有し、見積もりや次の打ち合わせの日程を決めます。決まらなかった相手は、時期を見て電話し直します |
地方の会社は、電話だけでは会ったことのない遠い会社のままです。一度でも顔を合わせると、その後のやり取りが進みやすくなります。電話で関心のある相手を見つけたうえで、会うべき相手にだけ会いに行くのが、移動の時間と費用をいちばん抑えられる形です。
当社では、電話で取ったアポイントの訪問商談を、商談代行(フィールドセールス)としてお受けしています。商談はお客様ご自身が出張して行う形でもかまいません。
首都圏の相手に電話するときの伝え方
名乗りより、相手の状況から入る
地方の会社が名乗ってから商品の説明を始めると、相手は聞く理由を見つけられません。新しい拠点を出したばかりの会社には拠点の立ち上げの話から、採用を増やしている会社には人の話から入るなど、相手の状況に合わせて最初の一言を変えます。
訪問の日程を具体的に伝える
訪問の予定がある場合は、何日に近くを回るので、そのときに少しお時間をいただけないかと、日程を具体的に伝えます。遠い会社からの漠然としたお願いより、相手も予定を考えやすくなります。
資料だけで終わらせない
首都圏の担当者からは、まず資料を送ってくださいと言われることがよくあります。資料を送るときは、届いたころに電話する日時を先に決めておきます。資料を送ったまま連絡が途切れるのを防げます。
食品・飲料なら、サンプルと卸を使う入り方も
食品や飲料のように、首都圏の相手と直接取引しようとすると、取引の最低ロットが合わないことがあります。その場合は、次のような入り方が有効です。
- 飲食店などの個店に電話し、関心のある店にサンプルを送る
- サンプルを試した店に、ふだん取引している卸や問屋を聞く
- その卸や問屋を通して、見積もりを出してもらう
店が使いたいと言っている商品であれば、卸も取り扱いを検討しやすくなります。個店から卸へ、下からつないでいく入り方です。
チェーン店は、本部だけでなく各店のオーナーも相手になる
首都圏にはチェーンの店舗が多く、本部に提案すれば一度に広がるように見えます。ただ、本部の決裁には時間がかかり、地方の新しい会社がいきなり採用されることは多くありません。
一方で、フランチャイズの店舗では、仕入れ先の選び方が各店のオーナーに任されている場合があります。当社が担当した飲料の案件では、メニューには品目しか書かれておらず、どのメーカーから仕入れるかは店ごとに決めていました。本部の採用を待つより、オーナーに直接提案できる余地があったということです。
チェーンを相手にするときは、本部と各店のどちらに決める権限があるのかを、最初の電話で確かめるようにしています。
事例:大阪の飲料メーカーが首都圏に広げるとき
- 状況:関東に営業の拠点がなく、大阪からの出張で営業していたため、首都圏には十分に回れていなかった
- 狙った相手:スーパーやコンビニは季節限定の扱いが多いため、通年で置いてもらえる飲食店、ホテル、温浴施設に絞った
- 進め方:まず地元の大阪府内で電話し、反応のよい業態と切り口を確かめてから、東京エリアの飲食店に広げる計画を立てた。個店にサンプルを送り、取引先の卸を聞いて、卸経由で見積もりを出してもらう入り方を使った
- 見えたこと:展示会の来場者は個人店のオーナーが中心で、狙う相手と合わなかった。電話で相手を選んでから届ける方が、取引したい規模の相手に近づけた
食品・飲料の新規開拓の進め方は「食品・飲料向け営業代行」で紹介しています。
首都圏の新規開拓で見る数字
首都圏の開拓では、件数だけでなく、次の数字をエリアごとに分けて見ます。
- 電話がつながる割合:エリアや業態、電話する時間帯で大きく変わります
- つながった相手から商談になる割合:相手の状況と、最初の一言が合っているかが表れます
- 訪問につながる割合:オンラインで済む相手と、会うべき相手の割合が分かります
- 1日にまとめられた訪問の件数:移動の効率を測る目安になります
ある飲食店向けの案件では、エリアを広げた月に、電話がつながる割合は下がった一方で、つながった相手から商談になる割合は上がりました。つながりやすさと、話の進みやすさは、別の数字として見る必要があります。どちらが下がったのかで、直すべきなのがリストなのか、トークなのかが変わるからです。
最初の2か月で確かめること
| 時期 | 確かめること |
|---|---|
| 1か月目 | エリアと業態を2〜3通り試し、どこで電話がつながり、どこで話を聞いてもらえるかを比べます。断られた理由も、エリアごとに記録します |
| 2か月目 | 反応のよかったエリアと相手に寄せ、訪問の日程をまとめて組みます。訪問した相手の反応から、トークや資料を直します |
| 3か月目以降 | 当たったエリアと相手の条件を再現しながら、ほかの県や業態に広げていきます |
首都圏は相手が多いので、最初から全部を回ろうとすると、どこが当たったのかが分からなくなります。小さく試して、当たった条件を広げていくのが確実です。最初の2か月の進め方は「テストセールス(営業PoC)とは?」でも詳しく解説しています。
料金と進め方
- 料金は月額固定で、初期費用はいただいていません。相手を絞って電話する進め方では、月20万〜50万円が中心です
- 訪問商談は、商談代行として別にお見積もりします
- 最低契約期間は2か月です。最初の2か月で、どのエリアのどの相手に反応があるかを確かめます
- 稼働開始は、ご契約日から標準14日です
よくある質問
- 京都の会社に頼んで、首都圏に訪問してもらえますか
-
できます。関東に住む担当者が、電話で取ったアポイントの訪問商談を担当します。訪問は商談代行として別にお見積もりします。
- 東京だけ、神奈川だけといった依頼もできますか
-
できます。エリアを絞った方が、訪問もまとめやすくなります。反応を見ながら、ほかの県に広げることもできます。
- 展示会とはどう使い分ければいいですか
-
展示会は一度に多くの人と会える場です。ただ、来場者が狙う相手と合わないこともあります。電話で相手を選んで届ける方法と組み合わせ、展示会で集めた名刺へのフォローの電話も含めて考えるのがおすすめです。
- 地方の会社でも、首都圏の企業に話を聞いてもらえますか
-
会社名だけでは難しいため、相手の状況に合わせた切り口で電話します。新しい拠点を出した、採用を増やしているなど、相手の状態に合わせて話を始めると、聞いてもらいやすくなります。
- 電話だけで商談まで決まりますか
-
オンライン商談で決まる相手もいれば、一度会いたいという相手もいます。電話で関心を確かめたうえで、会うべき相手にだけ訪問するのが、時間と費用を抑えられる形です。
- 首都圏に営業所を出す前に頼む意味はありますか
-
あります。先に電話でどのエリアのどんな相手に反応があるかを確かめておくと、営業所の場所や採用する人の条件を決めるときの判断材料になります。
- どのくらいの期間で、首都圏の取引先ができますか
-
商材と相手によって変わります。まずは最初の2か月で、どのエリアのどんな相手に反応があるかを確かめ、そこから訪問と商談を重ねていきます。
代表・田中からひとこと
私たちも京都の会社です。首都圏の企業に電話すると、京都の会社がなぜ、と聞かれることがあります。そこで信頼してもらえるかどうかは、相手の状況をどれだけ分かったうえで電話しているかにかかっています。
首都圏は、相手が多いぶん、絞り方ひとつで結果が大きく変わります。全部に電話して全部に会いに行くのではなく、会うべき相手を電話で見つけてから動く。拠点のない地方の企業ほど、この順番が大事だと考えています。
まとめ
地方の企業が一都三県で新規開拓するときのポイントは、次の3つです。
- エリア、業態、企業の状態で相手を絞ってから電話する
- 電話で関心のある相手を見つけ、訪問は1日に複数件まとめて組む
- ロットが合わない商材は、サンプルと卸を組み合わせて入り口をつくる
首都圏への販路拡大をお考えの方は、商材と、これまで売れてきた相手をお聞かせください。どのエリアから、どの相手に電話するのがよいかをご提案します。関西の市場を開拓したい方は「関西(大阪・京都・兵庫)の市場を新規開拓する方法」もあわせてご覧ください。
